僕がこれからの賃貸マンションの仲介について思うこと

ビビるくらい技術は日々、進歩してる。

僕が社会人として初めて仕事をしたのが2010年の4月からでした。
当時はまだまだiPhoneもスマホも普及してなくて、今でいうガラケーが携帯電話の主流な時代です。
※スマホ使っている同期もいた気がしますが、まだまだ「尖ってるやつ」という印象を持った記憶があります。

なので、パソコンにきたメールは自分の携帯宛に転送設定をしてないと見れないし、見れたとしても返信(携帯のアドレスから送ることになってしまうので)はできません。
ちょっとやばいメールがきてた場合は、急いで会社に戻ってメール対応をしていたのを覚えています。

他にも地図を見るのさえ、画面遷移の度に地図を読み込むので、なかなか駅から目的地の道のりがわからなかったり、そんな感じでガラケーじゃ頼りないので拡大した地図を何枚か印刷して持って行ったりと2010年でさえそんな時代でした。

でも、今やスマホ一つあれば一通りなんでもできるんじゃないかっていうほど、便利なものになっています。
出先からメールの返信、グループウェアでスケジュールの管理、地図アプリで周辺地図を印刷することはなくなりました。

そんな風に僕たちを取り巻く技術は大幅に進歩しているのに、賃貸マンションの仲介業務が劇的に変わったという印象は受けません。
まだまだ、FAXでなんでもやり取りするし、電子サインなんてまだまだ先の話そうだし、ようやく重要事項説明をSkypeなどのテレビ電話でやってみようって動きになったくらいです。

でも、一方でメッセンジャーアプリの活用やスマートロックの開発、ビッグデータからの適正賃料を算出する人工知能の開発など「不動産×IT」における技術進歩は着実に進んでいるのも事実です。
どこかの転換期で、何かのきっかけで業務や仕事内容が大幅に刷新されるという未来はけっこう近いところまで来てるんじゃないかなと思うし、じゃあ、これからの賃貸仲介の仕事ってどうなるんだろうってよく考えます。

「何を取り扱っている」より「何を取り扱わない」か。

まず、コピーできる情報についての価値がどんどん下がっていく。
代表的な例でいくと「掲載している物件情報」
物件名や住所、最寄り駅からの徒歩分数、定型化された設備情報など、これらの情報の価値はどんどん希薄化していく。いくつかの不動産会社や賃貸ポータルサイトをネットで見ればお客様でも、不動産業者であっても同じようにそこから情報をとることができます。
システム開発をしている身からすると、ウェブサイトを解析して必要な情報だけを吸い取るなんて、そんなに難しいものではありません。
※倫理的にやらないし、前述の通り、リスクを冒してまでやる価値はほとんどありません。

だから、「掲載物件数1万物件以上!!」「◯◯エリア1位の掲載物件数!」というのは、アピールポイントに成り得なくなってくる。
お客様自身もどんどん賢くなっているから、どの不動産会社でも同じ物件を扱えるということにそのうち気づく。

そうなってくると、「どの物件を掲載して、どの物件を掲載しないか」という部分がその不動産会社としてのスタンスを表すようになってくる。
僕が専門的な仕事をお願いするんだったら、どのジャンルでも75点出す人よりも、他の項目は50点でも一つのジャンルで95点を取れる人にお願いしたい。
「デザイナーズだったらあの会社」「タワーマンションだったらあそこ」「港区だったらこの会社」
そんな風に「物件を掲載することが仕事」ではなくて、「物件を選別して解説する」ことが仕事になってくると思う。

お客様の潜在的な欲求を知る。
それは、お客様の物語を知らないといけない。

「仕事」って一口に書きましたが、僕は仕事のことを「付加価値をつける」ことだと思っています。
どんな付加価値をつけるべきか。それはお客様の顕在的な欲求と潜在的な欲求を知らなければできません。

有名な話ですが、自動車メーカーのフォード社のエピソードに学ぶことができます。

もし私が顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えていただろう。

僕たちは、お客様が本当に何を望んでいるのか知らないと仕事になりません。
そして、お客様自身が何を望んでいるのかわかっていないというケースも往々にしてあります。

「お客様の潜在的な欲求を知る。」
これは、まだまだインターネットやITが未達の部分だと思っています。

インターネットの検索窓に「東京 京都 時間」と入力したとします。
きっと、どれくらいの移動時間がかかるのか、どんな移動手段があるのかということを答えとして瞬時に教えてくれます。
でも、システムはこれを入れた人が「京都で遠距離恋愛をしている彼女と仲直りをしようとしている。」という背景を知ることはできません。
本当は、「顔が見えなくても想いを伝える方法」や「離れていても同じ時間を共有する方法」を知りたいのかもしれません。
まだまだ、ITやインターネットは「どう質問すればいいかわかっている」以外では適切な答えを用意してくれません。

だからこそ、きちんとお客様とお会いして、お話をして、お客様の立場に立って考え、提案することが大切なんじゃないかなと思っています。

きっと、ITやシステムが自分じゃなくてもできる仕事をやってくれるようになる。
だからこそ、自分にしかできないこと、他じゃ代替できないことがサービスとして付加価値を産むんじゃないかなって思っています。

まとめ

なんやかんやといっぱい書いてきたけど、僕はシステムを開発したりウェブサイトを作ったりと、いわゆる「IT業界」に軸足を置いている人間です。
だから、そんな立場から「賃貸仲介」がどうのこうのと言うのは、もしかすると現場のことがわかってないとお叱りを頂くかもしれない。

でも、もともと不動産会社で働いていて、それからWEB制作やシステム開発の方に一旦行って、それからもう一度「不動産×IT」って形で戻ってきた僕だから見えるものがあるんじゃないかなとも思っています。
非対面サービスの可能性は大きく広がっていますが、そこには対面サービスを誠実に行えるという前提にあるものなんじゃないかと僕は考えています。

■ライター紹介

高田 圭佑

Bambooboy株式会社 代表取締役。
宅地建物取引士。プログラマー。

次の家では犬を飼いたい。
できるならキャバリア。
好きな色は、青とオレンジと白と金。
動物占いは「コアラの中のコアラ」。

WONDERFULL LIFEではデザインやライティング、WEB制作を担当。

株式会社SREM(WONDERFULL LIFEの企画・運営会社)代表の菅原の不動産会社時代の後輩にあたる。
Webサイトの作成や運営・クラウド賃貸管理ソフト リドックス(ReDocS)という個人オーナーや不動産管理会社向けのサービスを提供するなど、不動産×ITの領域に強みを持つ。

「清く正しく美しく」
宝塚歌劇団のモットーでもあること言葉。僕自身は宝塚に詳しくはないのですが、母親が僕に小さい頃からよく言い聞かせていた言葉です。
多くの方にとってWONDERFULL LIFEの最初の接点となるのがこのウェブサイト。
お客様へ誠実に正しい情報をご提供できるように、愛犬と楽しいお部屋探しができるように、僕はこの言葉を胸にしてお手伝いができればと思います!